どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。
今回紹介するのは、今年2024年の7月の後半にミシマ社から出版された「中学生から知りたいパレスチナのこと」という書籍。
著者は3名で、早稲田大学文学学術院教授の岡真里氏、京都大学大学院文学研究科教授の小山哲氏、そして京都大学人文科学研究所准教授の藤原辰史氏となります。
イスラエルという国が、第2次世界大戦の後に建てられたことは知っていましたが、正直何も深く考えたことはなく、「ふ〜ん、そうか。」のレベルで納得していました。
でもよく考えたら国が建つ以前は、当然そこが更地であったワケはなく、元々そこに住んでいたパレスチナ人は建国以来、追いやられたり迫害されたりして苦しんできたわけで、でもってパレスチナ人が反抗に出た2023年の10月7日の事件では、イスラエル人の悲劇ばかりがニュースで取り上げられて、パレスチナ人が悪者扱いにされてしまっている。
歴史の真実を伝えると同時に、この本の目的は、悲惨な出来事を目にしても、自分の生活が脅かされない限り「かわいそう」と一瞬思うだけで、通常の生活に戻ることができてしまう私たちの危機的な心のあり方に問いを投げかけることにあります。
とにかく学べることが多い本です。是非とも手にとって読んでください。
この本を読む理由は?
先程、
自分の生活が脅かされない限り「かわいそう」と一瞬思うだけで、通常の生活に戻ることができてしまう
と書きましたが、最近までは自分もまさにそのうちの一人でした。
ニュースや新聞を読むのも、単なる情報収集で、振り返ってみると、その情報収集さえも「世間のことを知らないと恥ずかしいから」という理由でやってたような気がします。
政治や歴史に関して、自分が今までと違った角度で興味を持ち始めたのは、イギリスでブレクジット(EU離脱) が起こった後に出版された、LBCラジオ局の人気プレゼンターで、ジャーナリストの、ジェームズ・オブライエンさんによる著書 “How They Broke Britain“ を読んだ時。(保守党のやってきたことにも、自分の無知にも両方メチャメチャ腹立ちました。w)
結局、自分が今まで知らなかった政治活動や歴史の背景で起こっている真実を知った時のショックが、現在の自分の立ち位置を知りたいという原動力となって、自分と周りとの関係を見直すきっかけ、
つまり…
「自分の生活が脅かされない限り「かわいそう」「うわっ、ひでぇ!」と一瞬思った後、サラッと通常の生活に戻ることができてしまう」
という心の状態からのリハビリが始まるんだと思います。
いろんな意味であなたにショックを与えるであろう、この真実が書かれた素晴らしい本も、病気のあなたが、そんなリハビリ活動に入ることができる入り口の一つです。
そして、リハビリに取り組むことで「人権問題」や「世の中の不平等」、そして「環境問題」についても、自分の立場と照らし合わせて考えることができるようになり、自分が普段何気なくやっている行動を続けていく事が、最終的にどれだけ自分自身を苦しめることになるかを理解できるようになります。
というわけでこの本は、何ともありがたい本なのです。✨
この本の「はじめに」が、出版社のサイトから読める!
この本の著者の一人で、現代アラブ文学やパレスチナ問題を専門とする岡真里さんが書いた「はじめに」の部分が、ラッキーなことに出版社のミシマ社が運営する 👉 「みんなのミシママガジン」というサイトで全文公開されています。
まずは読んでみてください。
… どうでしたか?
単純に、「ナチス・ドイツによるユダヤ人のジェノサイド」と「パレスチナ問題」が頭の中でつながっていなかった人も結構いるのではないでしょうか?
でも、ここで「ヘェ〜、そうやったんや」で終わらせてはいけません!
こういった知識は、自分から積極的に吸収して理解しようとしない限り、メディアが流す情報にあなたは操られてしまいます。
自分にはリハビリが必要だと認識するためにも、是非とも本を手に取って、歴史人文学者たちの伝える内容にショックを受けてください!!!
専門分野の異なる3人が、パレスチナ問題について伝える。
この本の面白いところは、異なった分野を担当している歴史人文学者たちが「パレスチナ問題」という一つの課題について、それぞれの角度から熱く語っているところにあります。
世の中では毎日たくさんの出来事が起こり、膨大な情報が流れてくるため、私たち一般人が日々の生活の中で特定の分野にだけ集中するなんて正直無理がありますよね。
今となっては、イスラエルのネタニヤフ首相に対して、国際刑事裁判所 (ICC)から戦争犯罪の疑いで逮捕状が発行されているので、物事は明らかになってきていますが、例えば少し前までは、岡真里さんが書いている前半の部分、
イスラエル政府は十月七日以降のガザに対するジェノサイドを正当化するために、「ハマスが赤ん坊四〇人を殺して、うち十数人の首を切り落とした」とか、「赤ん坊をオーブンで焼いた」とか、「野外音楽祭で集団性暴力があった」と主張しますが、これらはすべて、遺体収容にあたった民間ボランティア団体のメンバーによる虚偽の証言であったことが判明しています。
…なんて情報は、アメリカを筆頭にイスラエル側についているヨーロッパの国々、またはその国々といい関係を保っていたい国に住んでいたら、その国の流すイスラエルびいきの情報に埋もれてしまいます。
「ハマスの残忍なテロ」→「パレスチナ人ってひどい!」になってしまいますよね。
「シオニズム」(英語発音は”ザイオニズム”) なんて言葉も、過去に歴史の授業で覚えて記憶の片隅に残っているかもしれませんが、この言葉をしっかり理解していなかったら、全てのユダヤ人が悪いヤツらだと誤解してしまいます。
さらに、藤原辰史さんが語る、第二次世界大戦後の西ドイツによるイスラエルへの対応 (西ドイツは、イスラエルの原子力発電所建設を砂漠の緑化を目的に支援していたが、その資金が核兵器開発に流用されていたことを知りながらも、援助を続けていた) についての内容は「うわっ、マジっすか?」レベルのショックですし、「食料」を通して歴史をたどる視点も、私たちの普段の考え方にはない発想でとても新鮮です。
また、専門分野がポーランドの小山哲さんが、「イスラエルにあるポーランドの本屋」でポーランド関連の書籍を購入したという個人的な体験から話が展開していくところにも、すごく興味を着火させられます。
3人の教授たちが、自分たちの研究の参考のために読んだ本が、章の終わりの[注]の部分にリストアップされているところも、親切でうれしいですね。
というわけで真実を知ることによって、健康な精神を取り戻したい方は、こちらのリンクから購入できます。👇
最後に、この手の内容の本がもっと多く本屋に並び、時代遅れの資本主義一直線系の本が並ぶセクションを占領するくらいになり、大勢の人々がより重要なことに時間を使えるようになることを心から願っています。(英語バージョンも出版されて、ヨーロッパにも広がって欲しいものです。)
というわけで、今回は以上となります。
それではまた。
コンカズ
*この記事の英語ヴァージョンはこちらから
👉 Understanding Palestine: A Book Review on the Historical Context and Humanitarian Crisis