どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。
最近、気候変動についてもっと知るために環境関連の映画を時々見るようにしているのですが、今回は、カミさんが知人から勧められた、アリ・タブリジ監督のドキュメンタリー映画 “Seaspiracy” を観ました。
この映画は、海洋環境を理解する上で、チャールズ・クローバーさんの The End of the Line と並び、「必見の一本」と言えます。
消費社会の競争の中で、漁業者は後先を考えずに乱獲を続け、その間、私たち消費者の多くは海で何が起きているのかを知ることなく魚を食べ続けています。そしてこのままいくと、2048年までに海の中から魚が消えてしまうと言われています。
まだ観ていない方は、この機会にぜひご覧になってみてください。
イルカの追い込み漁

この映画のすごいところは、監督のアリ・タブリジさん自らが海洋問題の真実を暴くため、ときには厳重なセキュリティが敷かれた危険な場所にも潜入し、その状況を記録していく点にあります。
その潜入先の一つとして最初の舞台となっているのは、なんとカミさんの実家がある和歌山。ここではイルカの追い込み漁の様子を撮影しており、漁の過程で行われる残酷な捕獲や殺害の場面が映し出され、非常にショッキングな映像が目に飛び込んできます。
ちなみに捕獲されたイルカの一部は水族館向けに売られ、残りは殺されて肉にされてしまうそうです。

和歌山県内にある白浜のイルカショーを見に行ったことがあるのですが、その裏でこういうことが起こっていたと思うと複雑な気分になります。
魚食品会社と漁網製造会社のつながり

砂浜に打ち上げられた、廃棄された漁網に絡まったアザラシの死体。
捨てられた漁網は「ゴーストネット」と呼ばれ、アザラシ、イルカ、ウミガメなどの海洋生物が絡まり、命を落とすケースが多発しています。
現在使用されている漁網は、耐久性が何百年もあるナイロンやプラスチックで作られており、アリさんはこの漁網の廃棄問題こそが海洋プラスチック汚染の主要な原因の一つであると指摘。
そして、なぜ誰もこれを取り締まらないのかという疑問を投げかけます。
やがて、この疑問を追及していくうちに、漁業業界が魚食品業界と手を組み、この問題を隠しながら、「プラスチックストロー廃止」などのキャンペーンを推進することで、海洋汚染の本当の原因から人々の目を逸らそうとしていることが明らかになります。

ストローなどの一般廃棄物が海洋プラスチック汚染の主な原因と思われがちですが、実際のところ、海洋プラスチックごみの46%は廃棄された漁網なんだそうです。
環境破壊の加害者であるにもかかわらず、その責任を消費者のライフスタイルの問題へとすり替えているわけです。
さらに、缶詰などについている「この製品はイルカに害を与えずに獲られました」と保証する「ドルフィン・セーフ」のラベルや、「海洋管理協議会」などの団体が提供する「持続可能な漁業を認証するラベル」も、商業漁業が環境破壊を続けているにもかかわらず認証を与えることで、消費者に「環境に優しい」という誤解を与えているとアリさんは指摘します。
実際、「MSC(Marine Stewardship Council)」や「海洋管理協議会」などの団体は、水産業界から資金提供を受けていて、利益を優先しているという構造が暴露されました。
海洋生物の絶滅危機

底引き網漁の影響については、チャールズ・クローバーさんの書籍や映画でも述べられていますが、アリさんの映画「Seaspiracy」を通じても、私たちが深刻な危機に直面していることがよく分かります。
最も衝撃的なのは、このままのペースで漁業が続けば、
2048年までに海には魚がいなくなる可能性がある
という科学的報告があることです。
(2048年ですよ!遠い将来の話ではありません!)
さらには、
底引き網漁が1年間に破壊する海底の面積は、地球上のすべての森林を合わせたものよりも大きい
というショッキングな事実が語られていて、底引き網漁による破壊の規模を視覚的に伝えるために、飛行機との比較が出てくるのですが、そこでは
「底引き網漁の影響は、毎秒ロンドン・ヒースロー空港の滑走路に何百台もの飛行機を墜落させているようなものだ」
とまで表現されていています。

実際、1日あたり約4,300万エーカー(約17.4万平方キロメートル)の海底が破壊されており、イギリス全土の面積が、約24.2万平方キロメートルであることを考慮に入れると、これは絶望的な規模です。
海から魚が消えることが現実になると、海洋生態系の崩壊、世界的な食料不足、経済危機、気候変動の加速が一気に進むことになるので、これは最終的に「人類の生存に関わる問題」となってきてしまうわけです!!!!!
漁業における奴隷労働

最後にもう一つ挙げるとすれば、東南アジアの漁業界における「奴隷労働」の闇に関しての内容。
人身売買の被害に遭ったり、騙されて船に乗せられた労働者たちは、一度乗船すると逃げることができず、長期間にわたって過酷な労働を強いられます。
アリさんは、密かに漁船へ潜入し、奴隷労働者のインタビューに成功しているのですが、その証言の中には、漁船内で過労や虐待によって死亡した労働者の遺体が放置されることもある、という衝撃的な事実が語られます。
ここでは、私たち消費者が何気なく購入している海産物の背後で、どれほど非人道的な労働が行われているのかを知ることができると同時に、漁業が単なる環境問題にとどまらず、人権問題であるとも訴えています。
最後に…

ガーディアン紙のコラムニストであり、イギリスを代表する環境活動家として知られるジョージ・モンビオ氏も、何度か映画の中で登場します。
彼は、結局のところ魚を食べること自体が商業漁業を支え、その結果、環境破壊や人権侵害を助長しているため、
消費者が魚を食べるのをやめること
が最も効果的な解決策だと述べています。
魚が主食の一部である日本人にとって、これは厳しい現実ですが、少なくとも私たちは魚の消費量を減らしていかなければなりません。さもなければ、次の世代に未来はないです。
「消費が減れば、供給も縮小する」というのは避けられない道理です。
陸では、石油会社が化石燃料を掘り尽くすことで地球の温暖化を加速させ、海では、底引き網漁が生態系を破壊し、海洋資源を食い尽くす。
そして、これらの事実に対して自らの利益のために無視をキメつつ、我々一般大衆がそこに注目しないように嘘の情報を流し続け、突進し続ける政治家やビジネスマン。
こういった事実を知ってショックを受けたとしても、結局私たちは「自分一人の力ではどうにもならない」という理由で、目を逸らしてしまいます。そして、みんながそう思っているので、何も変わらずに私たちの未来は、毎日刻々と “The End” に向かっています。
みなさん毎日それぞれの目標に向かって頑張っていると思いますが、その目標を達成する頃に待っているのは、「住めない地球」かもしれません。
1日のほんの少しの時間でもいいので、環境破壊や気候変動について考える習慣をつけ、毎日の生活に取り入れてみませんか?
何が起こっているのか知らない人にこの映画を勧めたり、自分が知っていることをシェアしたりするような「小さな一歩」でも、未来を確実に変える力になるはずです。
今日から、始めましょう。
それではまた。
コンカズ
*この記事の英語ヴァージョンはこちらから
👉 Why “Seaspiracy” Should Change the Way You Think About Seafood and Overfishing