洋書レビュー

ビジネスを一歩進める:ロバート・ブラウニングの『Setting Up and Running a Limited Company』のエキスパートアドバイス



どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。


今回の記事では、イギリスで会社を立ち上げて、ビジネスを進める方法を英語で読んで理解したい方たちに、ロバート・ブラウニングさんが書いたこの本

image from Amazon.co.uk


SETTING UP AND RUNNING A LIMITED COMPANY” を紹介していきます。



会社を立ち上げる方法は、ネットで検索すればいくらでも出てきますが、じっくり紙の本を読んで理解したい、あまりボリュームのない洋書を手にとって英語で理解したい、という人におすすめの本です。


ちなみに第一章のはじめにも述べられていますが、この本はあなたがビジネスを始めるのをサポートする本ではありません。

すでに商業目的のプロダクトやサービスが存在する、つまりビジネスに現時点で関わっている方が、今後それを運営していくのを助ける本ということになります。


それでは見ていきます。

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本当に「会社」というカタチで OK?

image by Andy Hermawan

まずは、あなたのビジネスを「会社」という形にすることが、本当にあなたに合っているのか?という確認する内容で第一章は始まります。


個人経営、またはパートナーシップというカタチを取った場合と、会社というカタチを取った場合との違いが、横にならべて書かれているので、とても理解しやすいです。

さらに既に存在している会社をあなたが買い取ってオーナーになる、という選択を取る場合の注意点もしっかり書かれているので、コレはかなり親切ですね。


「自分ならなんとかできるだろう。」という根拠のない自信や、「自分には強運がついている」と勝手に信じて始めてしまう人たちが結構いるとも書いてありますが、あなたはどうでしょうか?


しっかりプロからアドバイスを聞いてから始める方が結果的に安全ですよって事で、どこからどんなアドバイスをゲットしたら良いかってことも記載されています。



反対に、パートナーシップのカタチでやっていく場合の利点もちゃんと書かれているので、「会社」というカタチにこだわる前に、どっちにしたらいいのかよく考えてから選択しましょう、ってことですね。

自分の会社を立ち上げる

image by hunters race

はい。

というわけで、第二章から先は、会社を立ち上げると決めた人達への内容となっております。


まずはじめに、パートナーシップの場合、ビジネスの借金はそれぞれのパートナー個人のものとなりますし、パートナーの片割れがもし死亡したら、パートナーシップは消滅してしまいます。

一方で、会社を立ち上げた場合は、会社の借金は会社の負債、失敗を犯して訴えられるのは会社、さらに一緒に会社を立ち上げた仲間が死亡しても、会社の存在は続きます。


会社自体が、人間みたいな存在になるので、会社の責任 (liability) はすべて会社の責任と限られ (limited) 、個人にまでは及ばないということになるわけです。



というわけなので、

あなたは、会社を代表してビジネスをしているのであって、あなたと直接ビジネスが行われるのではない。


という原理を心に留めておいてください、とのことです。



あとは、実際に会社登録をするための手続きについての詳細が続きます。

会社名を決める際の注意点
株の発行と配分
Articles of Association(会社運営についての内部規定)の決め方
会社取締役、秘書の役割
Companies house (イギリス会社登記所)に伝えること


などについての事が、実際に登録するときの画面の画像と並行して書かれているので、かなりわかりやすくて親切です。

これらの説明が一通り終わって第四章にだどりつくと、申請書の記入が待っています。

(第四章は、全てのページがまるごどアプリケーションフォームのコピーとなっています。)

会社を立ち上げた後は…

image by Kelly Sikkema

会社を立ち上げて一息ついたら、ここからが本番です。


勉強しなければならないことがあなたを待ち受けています。



例えば個人事業主の場合、ビジネスとプライベートが一緒なので、お金が必要な時は普通に銀行口座からお金を引き落としたらオッケーなのですが、会社となるとそうはいきません。

会社取締役も、基本は他の従業員の場合と同じで、自分に給料を払うというカタチになるので、会社の売り上げから勝手にお金を引き抜くという行為を取った場合、そこには税金が払われていません。したがって、これは違法です。

会社が会社取締役にお金を貸すことは、法律で禁じられています!!!


会社を経営しているのは自分なので、会社が儲けたお金は自分のお金と錯覚しがちですが、会社のお金は会社のお金です。


さらに、自分に払う給料の額も、よく考えてから決めないと、後で税金がたくさんかかってきてしまう可能性があるため、会計士にアドバイスを求めて決めた方が良いとの事です。



そのほかにも、

株主の権利
⚪株の配当について
⚪会社取締役の責任と義務
⚪会計の提出に関して
⚪ビジネス用の銀行口座をつくる際の注意
⚪従業員を雇う際の注意点


についての基本的な知識を学ぶことができます。



個人的に印象に残ったところは、会計の重要性について書かれた第8章と、”troubleshooting” と題された第11章ですかね。

僕は家計簿を5年ほどつけていたことがあるのですが、3日からひどい時には1週間ほどサボって、後で必死になって何があったか思い出しながら、レシートと睨み合っていた記憶があります。


株式会社となると税金なども絡んできて、最後に記録を役所に提出なくてはならないので、こんなやり方ではダメですね。w

会計には会社の健康状態が直接現れるので、経営しながら、どこが改善できるか理解するためにも、心してかからないといけないです。



後は、税金を払う頃になって「金が無い!」って状態に陥る人が結構いるようなので、ちゃんと節約しながら進めていきましょう、とのこと。



ほかにも、なかなか払ってくれない相手からお金を取り立てる際のの作戦や、会社のたたみ方など、エキスパートアドバイスが色々と書かれていますが、”PAYE” システムの扱い方など、自分がまだ手を出したことがない実践的なものを記憶するのは無理なので、この辺はやはり経験しながらチェックを入れていくって感じになりますかね。

株式会社設立に関連したボキャブラリー

image by PDPics


最後に、覚えておくと、きっと役に立つ会社設立に関連した英語ボキャブラリーをここにまとめておきます。

🔹association (組織、会、会社、協会)
a group of people who work together in a single organization for a particular purpose


🔹Memorandum of Association (会社定款[ていかん])
a short note designating something to be remembered in business


🔹Articles of Association (会社運営についての内部規定) 
a document that specifies the regulations for a company’s operations and defines the company’s purpose


🔹company director (会社取締役)
someone who sits on the board of a company


🔹minutes [aka minutes of meeting] (議事録)
notes that are recorded during a meeting


🔹resolution (決議案)
an official decision that is made after a group or organisation has voted 


🔹chairman (会長、委員長)
an executive elected by a company’s board of directors who presides over board meetings and works to build consensus in board decisions.


🔹registered office (登録事務所)
the official address of an incorporated company, association or any other legal entity


🔹company formation agent (会社設立代行業者)
an independent company that incorporates (registers) companies on behalf of new businesses, making the process quick, simple, and considerably affordable. Formation agents enable people to easily set up various types of company structures entirely online


🔹companies house (イギリス会社登記所)
the executive agency of the British Government that maintains the register of companies, employs the company registrars and is responsible for incorporating all forms of companies in the United Kingdom


🔹incorporation (法人設立)
the process by which a new or existing business registers as a limited company


🔹corporation (法人)
a legal entity that is distinct from its owners


🔹certificate of incorporation (会社設立証明書)
a legal document that shows you’ve formed and registered your limited company with Companies House


🔹UK SIC [Standard Industrial Classificationcode (産業分類コード)
a five-digit classification providing the framework for collecting and presenting a large range of statistical data according to economic activity


🔹share capital (資本金 / 会社設立の際に必要な資金であり、株主や投資家が出資したお金)
the amount of money the owners of a company have invested in the business as represented by common and/or preferred shares


🔹subscribe (株式などを申し込む)
to formally ask to buy particular shares when they are issued


🔹subscriber (株式引受人 株式を引き受けるという約束をした人、つまり、申込をし、発起人から 割当を受けた人のこと)
someone who formally asks to buy shares when they are issued


🔹nominal value = face value (名目[額面]価格 / その年度に実際に取引されている価格で表したもの)
value measured in terms of absolute money amount


🔹real value (名目価格から特定の年の物価を基準として、物価上昇や下落などの物価変動部分を取り除いたもの)
considered and measured against the actual goods or services for which it can be exchanged at a given time


🔹annum (年)
per annum = per year


🔹liquidation (清算または解散 / 企業が倒産や解散する際に、その企業の資産を現金化し、債権者への支払いを行うプロセス)
The process of selling off assets and using the proceeds to pay off creditors and shareholders


🔹a liquidator (清算人)
a person with the legal authority to act on behalf of a company to sell the company’s assets before the company closes in order to generate cash for a variety of reasons including debt repayment.


🔹annual return (年次報告書 [株主、役員、資本金など会社の基本情報が掲載されている書類]  ただし、2016年から”annual return”は、”confirmation statement” に変更されている)
a document that companies had to file at Companies House each year on the anniversary of the company’s incorporation. The annual return was replaced by the confirmation statement in 2016.


🔹confirmation statement (確認報告書 / Companies Houseに登録している会社の詳細情報が正確で変更されていないことを確認する文書) 
The statement that confirms your basic company information is correct and up to date.


🔹accounting reference date [ARD] (会計基準日)
The final day of your company’s financial year – and the date that your annual accounts must be made up to. It is automatically set by Companies House as the anniversary of the last day of the month of company incorporation.


🔹small companies (中小企業)
According to the Companies Act 2006 in the UK, a company is considered “ if it meets at least two of the following criteria:

1. Turnover not more than £10,200,000 
2. Balance sheet total not more than £5,100,000
3. Average number of employees not more than 50


🔹directors’ report (取締役による報告書)
a document that provides an overview of a company’s operations, financial performance, and prospects


🔹balance sheet (貸借対照表 / 企業や団体における一定期間内の財務状態を明らかにするために作成される一覧表)
a financial statement that contains details of a company’s assets or liabilities at a specific point in time.


🔹registrar (登記官、記録係)
an official whose job is to keep official records


🔹gross ([控除する前の] 総体の、全体の)
a total amount of money before tax or other contributions, etc. is taken off


🔹net (経費などを差し引いた純利益)
the profit that remains after all expenses and costs have been subtracted from revenue.


🔹audit (会計検査、会社などの監査)
a formal examination of an organization’s or individual’s accounts or financial situation


🔹creditor (債権者、貸し主)
the one to whom a debt is owed


🔹debtor (債務者、借り主)
a company or individual who owes money to a lender


🔹PAYE [Pay As You Earn] (イギリスの源泉課税方式)
the system your employer or pension provider uses to take Income Tax and National Insurance contributions before they pay your wages or pension.


🔹income tax (所得税)
a tax you have to pay on your income


🔹corporation tax (法人税)
the main tax that a limited company must pay


🔹Employer Annual Return (雇用主年次報告書) 
a report that companies must send to the government each year giving particular details, such as the names of company directors, details of assets and shares


🔹writ 
(裁判所または司法官により発行される法律文書)
a legal document that orders a person to do a particular thing


🔹capital gains tax (譲渡所得課税)
a tax on the profit you earn when you sell an asset that has increased in value


と、まぁこんな感じになります。




各トピックに関してもっと詳しくなるためには、もちろんそのエリアを重点的に取り扱った本や、関連ウェブサイトなどを検索する必要がありますが、イギリスで会社を立ち上げるのに基本的な知識を得るには、すごくわかりやすい本だと思いました。



興味のある方は、こちらから購入できます。👇



それではまた。

コンカズ



*この記事の英語ヴァージョンはこちらから

👉 A Guide to Starting a Limited Company: Reviewing Robert Browning’s Essential Book

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